イオン化エネルギーとイオン化傾向 < 酸化還元 < 物質の変化
イオン化エネルギー
イオン化エネルギーは原子がもつ電子の取り出しにくさを表す。単体の原子から電子を奪って陽イオンにするために必要なエネルギーで表す。値が小さければ陽イオンになりやすく,大きければ陽イオンになりにくい。
希ガスは安定した原子であるから大きな値をとる。ハロゲンは最外殻電子があと1つで希ガス型の電子配置となるハロゲンも大きな値をとる。アルカリ金属やアルカリ土類金属は,希ガス型の電子配置よりも電子が少し余っているために電子を放出しやすく,その値は小さい。
電子親和力は単体の原子に電子を1つ加えて陰イオンにするときに放出されるエネルギーのことである。ハロゲンにおいて最大となる。
第nイオン化エネルギー
単体の原子から1個の電子を奪って陽イオンにするのに必要なエネルギーを第1イオン化エネルギーという。さらにもう1つ電子(2個目の電子)を奪うのに必要なエネルギーのことを第2イオン化エネルギーという。……。n個目の電子を奪うのに必要なエネルギーのことを第nイオン化エネルギーという。
電子を失うたびに陽イオンの価数が増える。次の電子を取り出すためにはクーロン力相当の力を新たに加えることが必要となる。よって,第1イオン化エネルギー<第2イオン化エネルギー<第3イオン化エネルギー…,である。
イオン化傾向との違い
イオン化傾向とは,固体の金属原子が水溶液に溶けて陽イオンになる「なりやすさ」を順番に並べたものである。
イオン化エネルギーは「単体の金属」から電子を奪って陽イオンにするためのエネルギーである。
一方,イオン化傾向は「固体の金属」が水溶液に溶けて陽イオンになる順序である。金属は普通固体であり,金属結合によって結びついている。これを「単体」にする前に昇華させて気体にする。すなわち,昇華熱が必要である。その後,イオン化エネルギーと同様の過程をたどり,さらに水溶液に溶かして水和させる。すなわち,水和熱が必要である。
イオン化エネルギー 金属(単体:気体)→(電子を奪う)→陽イオン
イオン化傾向 金属(固体)→(昇華)→金属(単体:気体)→(電子を奪う)→陽イオン→(水溶液に溶かす)→水和イオン
KとNaでは,イオン化エネルギーではNaが大きいが,イオン化傾向ではKが大きい。昇華熱と水和熱によって順序が入れ替わるからである。